伝えたい人を具体的にイメージできて、
はじめて言葉は力を発揮します。
まず誰に何を伝えるのかにこだわります。
キャッチフレーズが時代の気分をつくり、流行歌のように誰もが覚えている。そんな時代がありました。高度成長期の日本は誰もが手の届く豊かさを求めて、大量生産・大量消費のためにマス広告を利用してきました。その中で、キャッチフレーズはとても大きな役割を果たし、ヒットキャッチフレーズをつくったコピーライターはある種のスターとしてマスコミにもてはやされました。時代そのものが飢えていた。だから広告は、打てば打つだけ響いた時代です。
モノの買い方が変われば、伝え方も変わる。コミュニケーションの意味も変わる。当然キャッチフレーズの役割も大きく変わってきました。しかし、あの頃のような人々の心に深く刻まれるようなキャッチフレーズはもう生まれなくなったのだろうか。情報の賞味期限がどんどん短くなってきたように、言葉の賞味期限も短くなったいまだからこそ、キャッチフレーズは本来の伝えたい人にメッセージを届ける力を、もう一度獲得しなければならない気がします。
小説家であり劇作家、放送作家でもあった井上ひさしは、「作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、誰でもわかる文章で書くということだけなんです」と語っています。しかしいまの時代のコピーライターは「誰にでもかけることを、誰にでもわかる文章で書いている」そんな気がします。似ているようで大違い。そこには気づきや驚きがないのです。
広告の基本は、人の心を動かすことです。しかし、かつてのように大がかりな仕掛けで多くの人々を強引に振り向かせることはもうできない。モノを売りたいならどんな人に売りたいのかを見極め、その人の心を動かさなければ売ることはできない。人の心を動かすには、その人に気づきや驚きを与えなければ、心は動かないのです。そういう力を持つ言葉がキャッチフレーズです。モノと人のコミュニケーションを生み、その後のブランディングの柱となるのがキャッチフレーズの役割です。
新しい商品のオリエンテーションでは、よく新商品の優れた点を訴求ポイントとして箇条書きにした資料が手渡されます。訴求ポイントは、ひと言でいえば「この商品の売り」です。しかし、これはあくまで売り手(企業)の視点での話。ものを売るにはもうひとつの視点、生活者の視点が重要です。
「いま生活者は何を求めているか」「どうして欲しいと思っているか」を見つけること。それが本当の訴求ポイントです。このことに気がつかないと、売れるキャッチフレーズを生み出すことはできません。クライアントが考えた訴求ポイントの代弁者になっているだけで、そこにはクリエイティブな洞察力などないといえます。人は何を求めているのかが見つかって、はじめてどう伝えると効果的なのかという表現力の問題になる。はじめのボタンを掛け違ってしまうと、その後でどう取り繕っても人の心を動かし、行動に移させる売れるキャッチフレーズは生まれません。
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